- 文芸編集者のコメント -

今回、モナコ インサイド ストーリーの全11タイトルが揃った事で、一編だけでは把握しきれない、著者のモナコとのつきあい方も見えてきて、そのあたりも興味を惹くところであるが、見逃してはならないのが、このストーリーに登場する人物たちは、著者が築き上げたポジションと、その人脈を物語る証人であり、著者だから書き得た作品に仕上がっている点である。加えて、モナコの憐憫たる日常を活写する一方で、普遍的な人間の葛藤を掬い取っては、読み手の共感を引き寄せる洞察もしっかりなされている。読者対象を見据えた、書き手の鋭い眼力を証明するのだが、その資質をはっきりと認識させられたのは、以下のくだりであった。

「富と栄光に彩られた優雅な人々の人生に隠される"デリケートでパーソナルな領域"を垣間見る度、"全て完璧ですばらしい人生" なんて存在しないことを思い知らされる。」‐ 「フランス上流階級出身 Mr パーフェクトの悩みごと」のラストを締めくくる言葉だが、それはこう続く。「やはり 一番幸福なのは、心が満たされた人達ではないかしら? これは私にとってモナコに住んだからこそ再確認した "真実" であり、"永久のテーマ"でもある。」‐怜悧な眼差しが見極めた、この真実 を読み手はどう受け取るのであろうか。ゴシップ的好奇心を満たす、至上の享楽という上澄みをすくえば、富と栄光が土台を成した社会から発する問題提起が見えてくる。

昨今 "セレブ" をお洒落に着飾る風潮がもてはやされる日本だが、それを有り難がる彼らに本作を読ませてみたいものだ。

Monaco Inside Story - Monte Carlo

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